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作成日:2026/11/02
家族の絆を壊さないための具体的な予防策

長野県松本市の税理士、行政書士の奥原です。

遺産相続において、最もトラブルに発展しやすい関係性が「兄弟姉妹」です。
幼少期を共に過ごした仲であっても、親の財産が絡んだ瞬間に「感情の対立」と「権利の主張」が激突し、文字通り骨肉の争いへと発展するケースが後を絶ちません。
本記事では、税理士、行政書士の視点から、実際に起きた兄弟間の相続トラブル事例を解説します。
その上で、なぜ揉めるのかという心理的・法的背景、そして「家族の絆を壊さないための具体的な予防策」を解説します。

 

1. なぜ「兄弟姉妹間」の相続は骨肉の争いになりやすいのか?

税理士、行政書士として多くの相続手続きに立ち会ってきましたが、配偶者と子供の相続に比べ、兄弟姉妹間の相続は感情論がもつれ、揉めやすいという特徴があります。それには3つの明確な理由があると思います。

 

�@     今まで貯めてきた「不公平感」という感情が相続を契機に出てくる

• 幼少期の格差: 「兄ばかりひいきされていた」「妹だけ私立に行かせてもらった」等という数十年前の過去の記憶が蘇ります。

• 介護の負担: 「自分だけが親の面倒を見てきたのに、法定相続分が同じなのは納得いかない」という不満が爆発します。

�A     それぞれに「別々の家庭(配偶者)」がいる。

• 配偶者の介入: 兄弟姉妹本人は「丸く収めよう」と思っていても、その配偶者が「もっと権利を主張すべきだ」「子供の教育費に必要」と背後から口を挟むことで、家族間の交渉が決裂するケースが非常に多いです。

�B     親という「絶対的な調整役」の不在

• ブレーキの喪失: これまで家族のバランスを保っていた親が亡くなることで、調整役がいなくなり、兄弟姉妹の本音・感情がむき出しとなり、誰にも止めることができなくなります。

2. 【実例紹介】税理士が見た兄弟相続トラブルの典型事例

現場で頻発する、4つの代表的なトラブル事例を紹介します。

【事例�@】「実家しかない」のに法定相続分を主張され、売却へ追い込まれたケース

 • 【家族構成】 長男(実家で親と同居・介護)、次男(独立してマイホーム購入済み)、三男(独立してマイホーム購入済み)

• 【相続財産】 自宅不動産(価値2,000万円)、現預金1000万円(合計3,000万円)

トラブルの経緯

長男は「自分が最後まで親を看取ったのだから、このまま実家に住み続けたい」と考えました。しかし、次男と三男は「法律上の権利はそれぞれ1/3(1,000万円)ある。兄貴が実家を相続するなら、俺達(次男と三男)の分の2,000万円を現金で払ってくれ(代償分割)」と主張。現預金は1000万円しかなく、長男自身の貯金を合わせても次男と三男に支払う現金を準備できませんでした。
結果として、長男は実家を売却して現金化し、兄弟間で折半することになりました。
このご家庭、実家も失い兄弟間の関係も断絶してしまいました。

【事例�A】「介護の苦労」vs「法定相続分」の主張合戦

• 【家族構成】 長女(近所に住み、6年間親の介護や買い出しを担当)、長男(遠方に住み、年に数回帰省するのみ)

• 【相続財産】 現預金4,000万円

トラブルの経緯

長女は「これだけ介護を頑張ったのだから、せめて現金の7割(2,800万円)はもらう権利がある(寄与分の主張)」と考えました。
一方、長男は「介護は子供として当然の義務。子ども同士平等に2,000万円ずつ分けるべきだ」と一歩も引きません。
現在の法律では、親族の介護が「寄与分(療養介護を献身的に続けていた場合などに、他の相続人よりも多くの財産を相続できる制度)」として認められるハードルは極めて高く、単なる通院の付き添いや身の回りの世話レベルでは認められないことがほとんどです。
結果として財産は2,000万円ずつ分けることになりました。
長女は「精神的・体力的苦労が全く報われない」と絶望し、このお二人も相続を契機に絶縁状態になりました。
「向こうの配偶者がかなり口を挟んできたと思う」と長女の方はおっしゃっていました。

 

【事例�B】「生前贈与の不公平」が引き金となった過去の清算トラブル

• 【家族構成】 兄(マイホームなし)、弟(住宅購入のため親から1,000万円の援助を受けていた)

• 【相続財産】 現預金2,000万円

トラブルの経緯

親が亡くなった際、残された2,000万円を弟は「1,000万円ずつ分けよう」と提案しました。
しかし兄は猛反発。「お前は生前に1,000万円もらっているんだから、今回の2,000万円はすべて俺がもらうべきだ(特別受益の持ち戻し主張)」。
弟は「あれは30年も前の話だ」と言い張り、遺産分割協議は完全にストップ。
調停へと発展しました。この段階になってしまうと、税理士ではどうしようもなくなり、裁判所で話し合いを続けていくことになります。

【事例�C】「認知症の親」に書かせたと遺言書を疑う泥沼の不信感

• 【家族構成】 姉(母親と同居)、妹(別居)

• 【相続財産】 不動産および現預金(合計6,000万円)

トラブルの経緯

母親の死後、姉が「すべての財産を姉に相続させる」と母が書いた遺言書を提出しました。
しかし、その遺言書が作成された日付は、母親が軽度の認知症と診断された後でした。
妹は「お姉ちゃんが母さんを騙して、無理やり書かせたに違いない」として遺言の無効を訴えました。
結局遺言書の有効性をめぐって裁判(遺言無効確認訴訟)になり、弁護士費用でお互いの遺産が大きく削られる結果となりました。
当然この姉妹も断絶状態です。

 

3. 税理士が教える、トラブルを防ぐための「3つの鉄則」
これらの状況を防ぐために、親御様が健在なうちに打つべき対策は実は明確です。

 対策1:必ず「遺言書」を公正証書で遺してもらう

兄弟間の揉め事を防ぐ最大の対策は遺言書です。

• 自筆ではなく「公正証書遺言」にする: 公証人が関与するため、認知症による無効リスクや改ざんの疑いを大幅に減らせます。

• 「付言(ふげん)事項」を活用する: 遺言書の最後に「なぜこの配分にしたのか(例:長女には介護をしてもらったので多く遺す。長男も理解して仲良くやってほしい)」というメッセージを遺すことで、お互いの感情的暴走を抑えられます。

対策2:不動産がある場合は「納税」と「代償金」の現金を準備する

実家などの不動産がある場合、それを引き継ぐ人(長男など)に現金を残す仕組みを作ります。

• 生命保険の活用: 親を被保険者、実家を継ぐ子供を受取人とした生命保険に加入します。
死亡保険金は「受取人固有の財産」となるため、遺産分割協議の対象外となり、他の兄弟へ支払う「代償金」の原資としてそのまま使えます。

この代償金が不満を和らげるクッションとしての機能を果たします。

対策3. 生前贈与は必ず「書面」と「通帳履歴」に残す

「あげた」「もらっていない」の論争を防ぎます。

• 贈与契約書を必ず作成する。

• 現金手渡しではなく、必ず銀行振込で行い、記録を10年間は保管する。

 

4. まとめ:相続を「争族」にしないために

兄弟間の相続トラブルは、決して「うちは仲が良いから大丈夫」と言えるものではありません。お金が絡むと、人間の心理は驚くほど変わってきます。

大切なのは、親が元気なうちに家族で「財産の話」をオープンにすること、そして専門家を交えて法的に不満の出ない対策を完了させておくことです。

少しでも家族の相続に不安がある場合は、揉めてしまう前にご相談ください。

 


あずさ税理士法人

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