TOPページ
事務所案内
サービス案内
親なきあと
財務支援
お問合せ
相続
作成日:2026/10/26
認知症や介護で知っておくべき「費用のリアル」「今すぐやるべき口座凍結・生命保険対策」

【長野県松本市の税理士が解説】認知症と介護のお金の問題と対策


長野県松本市の税理士、行政書士の奥原です。

「父さん最近物忘れが多くなったな……」「母さん同じことを何度も言うようになったな…」

お子様の中には、親御様に対しそう感じることがあるかもしれません。我が国では現在65歳の高齢者のうち、約1/5が認知症若しくはその予備軍といわれています。認知症は決して珍しくなく、皆様のお知り合いにも認知症の方がいらっしゃるのではないでしょうか。

実は、認知症や介護はそれに関するお金の知識があるかないかで、家族の負担が変わることが珍しくありません。
逆に、何の対策もせずに放置していると、ある日突然「親の銀行口座が凍結された」「親が加入していた生命保険の存在を誰も知らず、請求すらできなかった」という事態に陥るリスクもあります。


今回は税理士の視点から、認知症や介護で知っておくべき「費用のリアル」「今すぐやるべき口座凍結・生命保険対策」をわかりやすく解説します。


1. 認知症介護の「費用のリアル」:いくら準備すればいい?

まず、認知症や介護には一体いくらのお金がかかるのでしょうか。
一般的な介護費用の相場を「在宅(自宅)」と「施設」の2つのパターンで見ていきましょう。

介護期間全体の平均額は「約500万〜550万円」

介護にかかる費用の全国平均は以下のようになっています。

  • 初期費用(住宅改修や介護ベッドの購入など): 約50万〜70万円
  • 月々の介護費用: 約8万〜9万円
  • 平均介護期間: 約4年7ヶ月(55ヶ月)

これらを単純計算すると、約500万〜550万円が介護費用のひとつの目安となります。

「在宅介護」と「施設介護」の月額費用比較

ただし介護の形によって、月々のランニングコストは大きく変動します。

�@ 在宅介護:月額 約5万円前後

  • 内訳: 介護保険サービスの自己負担分(デイサービスや訪問介護など)、おむつ代、医療費、光熱費の増加分。
  • 特徴: 費用は抑えられますが、家族の肉体的・精神的負担が大きくなる傾向があります。

�A 公的施設(特別養護老人ホーム:特養など):月額 約8万〜15万円

  • 内訳: 施設サービス費、食費、居住費(部屋代)。
  • 特徴: 入居一時金が原則不要で、月々の費用も低く抑えられます。ただし、要介護3以上でなければ原則入居できず、待機者が多いのがデメリットです。

�B 民間施設(認知症グループホームや有料老人ホーム):月額 約12万〜25万円

  • 内訳: 家賃、管理費、食費、介護サービス費、上乗せ介護費用。
  • 特徴: 認知症専門のケアが受けられるグループホームなどは手厚い環境ですが、月々の負担は重くなります。施設によっては、入居時に数百万円〜数千万円の「入居一時金」が必要な場合もあります。

 

税理士のアドバイス:
介護費用の原則として「親の年金と親の貯蓄」の範囲内で収めるのが鉄則です。この範囲内で介護の選択をしていきましょう。子どもの生活費を削って親の介護費に充ててしまうと、共倒れのリスク(介護破産)が高まります。まずは親にどれだけの資産があるのかを把握することから始めましょう。


2. 現実的に一番キツイ「親の口座凍結」とそのリスク

認知症や介護において、費用そのものよりキツイのが「銀行口座の凍結」です。

なぜ口座が凍結されるのか?

銀行は、預金者が認知症になり「自ら意思決定ができない」と判断した場合、犯罪被害や親族間のトラブルを防ぐために、口座を凍結(取引停止)します。

この状態だと、たとえ実の子どもであっても、親のキャッシュカードを使ってお金を引き出すことが原則できなくなります。窓口で「親の介護費用につかうから」と説明しても、本人確認が取れなければ拒否されてしまいます。

口座が凍結されるとどうなる?

親の口座が凍結されると、以下のような問題が発生します。

  • 親の医療費やデイサービスの費用を、子どもが自分の貯金から一時的に全額立て替えなければならない。
  • 老人ホームへの入居一時金(数十万〜数百万円)を支払うために、親の定期預金を解約しようとしても受け付けてもらえない。
  • 親の自宅を売却して介護費用に充てようとしても、本人の意思確認ができないため不動産の売却ができない。

結果として、子どもの負担が増えるケースが後を絶ちません。


3. 【時期別】税理士が推奨する「口座凍結対策」の選択肢

口座凍結を防ぐための対策は、「親の認知症がどの程度進行しているか」によって選ぶべき手段が全く異なります。

【パターンA】親がまだ元気、または軽度(MCIなど)の場合

親の意識がしっかりしており、契約内容を理解できる今こそ、最も選択肢が多く、費用を抑えられる対策が可能になります。

�@ 民事信託(家族信託)

  • 仕組み: 親(委託者)と子ども(受託者)の間で「信託契約」を結び、親の財産(預貯金や不動産など)の管理権限を子どもに移す仕組みです。
  • メリット: 親が認知症になった後も、子どもが「自分の判断」で管理口座から介護費を引き出したり、親の不動産を売却したりできます。
  • デメリット: 契約書の作成を司法書士や税理士などの専門家に依頼するため、数十万円の初期費用がかかります。

�A 任意後見制度

  • 仕組み: 将来、認知症が悪化した場合に備えて、あらかじめ「自分の後見人(財産を管理する人)」を子どもなどに指名し、公証役場で契約しておく制度です。
  • メリット: 認知症発症後に家庭裁判所が関与してスタートするため、安全性が高いです。
  • デメリット: 実際に制度が始まると「任意後見監督人」という弁護士などの専門家がつき、月額1万〜3万円程度の報酬(費用)が一生涯発生し続けます。

�B 銀行の「予約型代理人指名サービス」

  • 仕組み: 親が元気なうちに、あらかじめ子どもを「代理人」として銀行に登録しておく簡易的なサービスです。
  • メリット: 手続きが簡単で、費用が他の対策に比べ低いです。
  • デメリット: 銀行ごとに手続きが必要で、定期預金の解約や不動産売却といった大きな取引には対応できないケースが多いです。

【パターンB】すでに認知症が進行し、意思疎通が難しい場合

すでに親の判断能力が失われている場合、上記の「家族信託」や「任意後見」の契約を結ぶことはできません。
この場合は、以下の方法をとることになります。

�C 法定後見制度

  • 仕組み: 家庭裁判所に申し立てを行い、親に代わって財産を管理する「成年後見人」を選んでもらう制度です。
  • デメリットに注意: 子どもが後見人に立候補しても、親の資産額が多い場合などは、裁判所の判断で見ず知らずの弁護士や司法書士が後見人に選ばれる確率が約8割です。その場合、月額2万〜6万円の報酬が、親が亡くなるまで何年間も親の財産から引かれ続けます。また、後見人がつくと、親の財産を「守る」ことが最優先されるため、孫への贈与や柔軟な節税対策などは一切できなくなります。

�D 全国銀行協会の指針に基づく「緊急引き出し」

  • 仕組み: 2021年、全国銀行協会は「認知症発症後であっても、本人の医療費や介護費に充てることが明白な場合は、親族による引き出しに応じる」という指針を出しました。
  • デメリット: 非常に厳格です。病院や介護施設からの「請求書(領収書)」の現物を毎回持参する必要があり、手元に現金を引き出すことはできません。

4. 盲点になりがち!親の「生命保険」が認知・介護に直面する家族を救う。事前に確認すべき2つの制度

前述のとおり、銀行口座は認知症により凍結し引き出せなくなることをお伝えしました。そのとき効力を発生するのが生命保険です。
介護や認知の場面で役立てるために事前に確認しておくべき生命保険の2大制度を解説します。

�@ 指定代理請求制度(家族が代わりに申請可能)

通常、生命保険の給付金(入院給付金や介護一時金など)は、契約者である「親本人」が請求しなければなりません。しかし、親が認知症になってしまうと、自分で書類を書いて請求することができなくなります。

そこで活躍するのが「指定代理請求制度」です。

  • 仕組み: 親が元気なうちに、あらかじめ子どもなどを「指定代理請求人」として登録しておく制度です。
  • メリット: 親が認知症で請求の意思表示ができない状態になっても、子どもが代わりに給付金や保険金を請求し、受け取ることができます。
  • 注意点: 多くの保険会社で「特約(無料)」として付加できますが、事前に登録していないと、認知症になってからでは変更手続きができません。手続きができない場合、やはり「法定後見人」を立てる必要が出てきてしまいます。今すぐ親の保険証券を確認し、未登録ならすぐに手続きをしてください。

�A 保険料払込免除(保険料の支払いが免除になる特約)

医療保険やがん保険、一部の終身保険には、「保険料払込免除特約(P免)」がついている場合があります。

  • 仕組み: 保険会社が定める「所定の身体障害状態」や「特定の病気(がん・急性心筋梗塞・脳卒中など)」、または「所定の要介護状態(要介護2以上など)」になった場合、それ以降の保険料の支払いがすべて免除(タダ)になる仕組みです。
  • メリット: 保険料の支払いは免除されますが、保障はそのまま一生涯(または保険期間中)続きます。
  • 税理士の視点: 認知症が原因で要介護認定を受けた場合、この「払込免除」の条件をクリアしている可能性があります。もし免除が認められれば、毎月数万円の保険料負担がゼロになり、浮いたお金をそのまま介護費用に回すことができます。これも「家族が気づいて申請」しなければ、保険会社は自動的に免除してくれません。

5. まとめ:税理士が教える「今すぐ実践すべき3ステップ」

認知症と介護とお金の問題は、「後回しにするほど選択肢が減り、家族の負担が増える」という特徴があります。
親の物忘れが気になり始めたら、次の3つのステップを今日から進めてください。

【ステップ 1:親の「財産・保険」をリスト化する】

通帳の保管場所、加入している生命保険の証券を集めて内容を確認する。

 ▼

【ステップ 2:元気なうちに「家族信託」や「指定代理請求」の手続きを】

まだ意思疎通ができるうちに、銀行の各種サービスや生命保険の指定代理請求人を登録し、将来の凍結・請求不能を防ぐ。

 ▼

【ステップ 3:介護が始まったら「免除特約」の申請を】

保険の払込免除に該当しないか確認してください。

 

介護は突然始まります。しかし、正しい知識を持って事前に備えておけば、経済的な不安の大部分は解消できます。


より具体的な資産規模に応じたシミュレーションや、相続税対策も含めたご相談は、あずさ税理士法人までお気軽にお尋ねください。

 


あずさ税理士法人

長野県松本市中央1丁目21−3 長野県理容会館2階南号室
TEL: 0263−87−1712  FAX:050−3730−1922

©あずさ税理士事務所